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最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)1072号 判決

主文

被上告人川井利和の請求中、昭和四八年二月五日以降同四九年九月三〇日まで年額一三万一八三八円七五銭の割合による金員を超える金員の支払を認容した部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

前項の部分に関する被上告人川井利和の請求を棄却する。

上告人らのその余の上告を棄却する。

訴訟の総費用は、第一、二、三審を通じてこれを六分し、その一を被上告人川井利和の、その余を上告人らの各負担とする。

理由

上告代理人桂秀威の上告理由第一点一について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第一点二について

共有にかかる土地が不法に占有されたことを理由として、共有者の全員又はその一部の者から右不法占有者に対してその損害賠償を求める場合には、右共有者は、それぞれその共有持分の割合に応じて請求をすべきものであり、その割合を超えて請求をすることは許されないものといわなければならない。

本件において原審の確定するところによれば、被上告会社及び被上告人川井は本件土地を競落し、昭和四八年二月五日競落代金を納入してその所有権を取得したこと、本件土地につき被上告会社は四分の三、被上告人川井は四分の一の各共有持分を有していたところ、昭和四九年一〇月一日被上告人井上に対して本件土地の右共有持分を売り渡したこと、上告人らは昭和四二年一月本件土地上に本件建物を建築所有し、右土地を不法に占有していること、昭和四八年二月以降の本件土地の賃料相当額が年額五二万七三五五円であること、が認められる。右事実によれば、上告人らが、各自、本件土地の不法占有による損害賠償として、昭和四八年二月五日以降同四九年九月三〇日まで、被上告会社に対してはその共有持分四分の三に相当する年額三九万五五一六円二五銭、被上告人川井に対してはその共有持分四分の一に相当する年額一三万一八三八円七五銭の各割合による損害を賠償する義務を負担するものであることは、前記説示に照らして、明らかである。しかるに、原審は、上告人らが連帯して被上告会社及び被上告人川井に対し右期間中年額五二万七三五五円の割合による損害、換言すれば右被上告人各自に対し右金員の二分の一に相当する年額二六万三六七七円五〇銭の割合による損害を賠償すべき義務があるとしてその支払を命じたものであつて、原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があるものといわざるをえず、右違法は原判決中右部分の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決及び第一審判決中、被上告人川井の昭和四八年二月五日以降同四九年九月三〇日まで年額一三万一八三八円七五銭を超える割合による損害賠償請求を認容した部分につき、原判決は破棄を免れず、更に、これと同旨の第一審判決は取消を免れない。この部分に関する被上告人川井の請求は棄却すべきである。

同第二点について

原審が確定した事実によれば、上告人らは、本件土地の不法占有者であることが認められるから、被上告人井上の本件土地所有権取得についてその登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者に当たらないことは、明らかである。したがつて、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九二条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 天野武一 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顕 裁判官 環 昌一)

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